アクティブノイズキャンセリングは、マーケターが愛し、ラボが疑う機能の代表格です。メーカー仕様には周波数別の減衰量がほぼ記載されず、「最大X dB」といった曖昧な主張だけが並びます。実際に何を実現しているのかを確かめるため、両ヘッドホンを当ラボの音響テストベンチにかけました。
テスト環境
- 無響室 + GRAS 45CA ヘッド&トルソーシミュレーター
- ピンクノイズを75 dB SPLで再生、50 Hz – 10 kHz、ANCオフ/最大で測定
- 実環境:35分間の通勤電車走行、環境騒音の実測値は78–82 dB SPL
無響室の結果(ANCオフ比の減衰量 dB)
| 周波数帯域 | AirPods Pro 3 | Sony WH-1000XM6 |
|---|---|---|
| 50–100 Hz | 24 dB | 31 dB |
| 100–300 Hz | 27 dB | 34 dB |
| 300–1 kHz | 22 dB | 28 dB |
| 1–2 kHz | 16 dB | 18 dB |
| 2–5 kHz | 11 dB | 12 dB |
| 5–10 kHz | 7 dB(パッシブ) | 9 dB(パッシブ) |
WH-1000XM6はすべての帯域でリードし、電車の走行音や空調ノイズが支配的な1 kHz以下で最も大きな差をつけました。AirPods Pro 3もインイヤー型としては依然として優秀で、高域ではSonyとの差は2 dB以内ですが、低域ではオーバーイヤー型の密閉性には太刀打ちできません。
この数値は体感でどう違うのか
デシベルは対数です。約10 dBの減衰ごとに、知覚される音量は半分になります。つまり電車の走行音の帯域におけるSonyの34 dBは、走行音がおよそ8分の1の音量に聞こえることを意味し、Appleでは5分の1です。実際のところ、電車内ではXM6は会話レベルの環境音をかすかなうなりに変え、AirPodsは曲間に気づく程度の低い響きを残します。静かなオフィスではどちらも完全で、違いが表面化するのは本当に騒がしい環境だけです。
通勤電車
ホワイトノイズのループ音源で35分テストした結果、耳内の残留騒音の実測平均はXM6で51 dB SPL、AirPods Pro 3で56 dBでした。主観評価でも、テスター2名ともブラインドでSonyを「明らかに静か」と評価しました。ただし無響室では見えない注意点がひとつ:風です。ホーム上では、XM6の大きなイヤーカップ表面が、耳に沿ったフラットなAirPodsよりも多くの風切りノイズを発生させました。風の強い通勤ではAppleの勝ちです。
外部音取り込みモード
ここで順位は逆転します。Appleの外部音取り込みは今なお業界で最も自然で、声が正しい音色と空間的な位置で届き、適応モードは突然の大きな音をポンピングなしに抑えます。Sonyのアンビエントモードは有能ですが、処理感が耳に付きます。ANCより取り込みモードで過ごす時間が長いなら(オフィス、サイクリング)、減衰性能の差を承知でAirPodsを選ぶ立派な理由になります。
ANC稼働時のバッテリー
Sonyの仕様ではANCオンで30時間を謳っていますが、当ラボの実測は音量50%で28.4時間でした。AirPods Pro 3は1回の充電で7.6時間(公称8時間)、さらにケースから約3回の追加充電が可能でした。フォームファクターも役割も別物で、オーバーイヤーは大西洋横断向けのデバイス、イヤホンは毎日持ち歩くデバイスです。
用途別の結論
- 毎日の騒がしい通勤(電車/地下鉄): WH-1000XM6の圧勝。
- 風の強い屋外での使用: AirPods Pro 3。
- オフィス+通話+取り込みモード中心の日々: AirPods Pro 3。
- 長距離フライト: 減衰量とバッテリーでXM6。イヤホンは予備として持参を。
フルスペックの並列比較はこちら:AirPods Pro 3 vs WH-1000XM6。ANCの実際の仕組み — フィードフォワード方式とフィードバック方式のマイクの違い、低域のほうがキャンセルしやすい理由 — は用語集の項目をご覧ください。